東北復興プロジェクト 放射能問題群の科学的把握と「魂の発見」

前々回に福島に赴いたレポートを書きましたが、その後更に原発について色々と調べてみました。その結果、様々な情報が集まってきました。

今回は、科学の限界を知るという意味において、原発について様々な側面からできるだけ分かりやすく説明してみます。

原発の問題は、ある意味で第三の国難の象徴とも言えるほど、相当根の深い問題だと感じています。

前回の記事で、除染の基準について書きましたが、0.23μSv/hは環境省の基準です。

それに対し、文科省は当初校庭の基準を3.8μSv/h まで認める通達を行いました。

普通に計算すると、年間33.28mSvの被曝量となりますが、文科省は外で活動する時間を少なく見積もって年間20mSvとしました。

しかし、20mSvでさえ大人の原発作業員の上限値で、放射能の感受性が4倍あると言われている子どもにとても適用していい値ではありません。(放射能は細胞分裂が活発な赤ちゃんほど影響が大きく、ご老人への影響はかなり小さくなります)

ちなみに、原発の作業員に白血病の労災がおりたのは5mSvです。

原発推進派の東大教授である小佐古敏荘氏が、この基準を子どもに適用することは許されるものではないと涙ながらに訴えられ、参与を辞任された涙の会見を覚えておられる方も多いと思います。

この基準は、父母からの猛反発を受けて、年間1mSvを目指すと修正されながら、3.8μSv/hは変えなくていいという矛盾した表現となっています。

また、文科省のHPにある教育基本法の教育の目的の中に「心身ともに健康な国民の育成」という一文がありますが、省としてその目的を大切にしているとは思えません。

被災地の子ども達の抱える困難を、どれだけ引き寄せているのか疑問が残ります。

理想と現実の乖離、現場と省庁の乖離の端的な表れだと思います。

また、省庁によって異なる基準が作られているのも、省庁間の調整ができていない日本の縦割り行政の弊害が現れています。

今回の事故に対する政府の判断には、なんでこんなにひどいことになってしまったのかと、心を痛める点がいくつもあります。

中でも、避難区域の指定のずさんさについては、本当に悲しい結果を生んでしまいました。

住民に対して、正確な情報が伝わらなかったために、汚染されていない地域から、汚染された地域へと移動してしまった方が多くいると聞いています。

汚染が最も厳しい地域の一つである飯館村は、今でも15~20μSv/hの放射線量が常時あるそうです。今回計測した地域の4~5倍ですが、震災直後は100μSv/hを超えていました。

ただし、福島原発からの距離は約30kmあるため、当初は避難区域にもなっていませんでした。

南相馬から飯館村に移動された方もいらっしゃるそうです。

避難区域は以下のように拡大していきました。

ステップ1 : 3/12に原発から20km圏内に避難指示
ステップ2 : 3/25に30km圏内に自主避難要請
ステップ3 : 4/22に飯館村が計画的避難区域(避難完了は更に一ヶ月後)

このように原発からの距離が、徐々に拡大していきましたが、放射能の汚染地域は円形には広がっていなかったことは前回のレポートに書きました。

つまり、汚染の実態に対して避難区域の指示は間違っていたと言えます。

実際の計測データは、アメリカから震災直後に送られており、早い段階から入手されていたと思いますが、それらが活かされることなく、直ぐに退去しなければならない地域に、2ヶ月以上も人が居ることになってしまいました。

人間のいのちを守るという何よりも大切にすべき点が、ないがしろにされてしまいました。

次に、原発の事故収束に対する政府の発言について見てみます。

政府は2011年12月16日に、原発は「冷温停止状態」にあるとされ、「事故収束宣言」を野田首相が出されました。そのため、既に原発事故は収束したと勘違いされている方もいらっしゃると思います。

しかし、事故終息宣言とはまったく異なる過酷な状況が今も続いています。

「事故終息宣言」が出されたときに、東京新聞に載っていた、作業員の方の声を紹介します。
-------
 作業を終え、首相会見をテレビで見た男性作業員は「俺は日本語の意味がわからなくなったのか。言っていることがわからない。毎日見ている原発の状態からみてあり得ない。これから何十年もかかるのに、何を焦って年内にこだわったのか」とあきれ返った。

 汚染水の浄化システムを担当してきた作業員は「本当かよ、と思った。収束のわけがない。今は大量の汚染水を生みだしながら、核燃料を冷やしているから温度が保たれているだけ。安定状態とは程遠い」と話した。

 ベテラン作業員も「どう理解していいのか分からない。収束作業はこれから。今も被ばくと闘いながら作業をしている」。

 原子炉が冷えたとはいえ、そのシステムは応急処置的なもの。このベテランは「また地震が起きたり、冷やせなくなったら終わり。核燃料が取り出せる状況でもない。大量のゴミはどうするのか。状況を軽く見ているとしか思えない」と憤った。

 別の作業員も「政府はウソばっかりだ。誰が核燃料を取り出しに行くのか。被害は甚大なのに、たいしたことないように言って。本当の状況をなぜ言わないのか」と話した。
-------

福島原発の中は、すさまじい被爆に晒されながら、作業員の方が闘われています。

事故発生から既に福島原発で働かれていた6名の方がお亡くなりになっています。

想像を絶するような過酷な状況の中で、日本を守るためにいのちがけで支えて下さっている方がたくさんいらっしゃるんだと思います。その声が届くことなく、政治的な判断がなされていることも本当に悲しい事実だと思います。

また事故終息宣言と乖離した状態として、4号機の問題があります。

4号機は未だに厳しい状況が続いており、プールが倒壊した場合は大気中で核燃料が燃えるという人類が経験したことがない事態が起こり、関東一円が汚染されて横浜まで住めない地域となる危険があります。

その処置は、2013年末開始を予定されているのですが、地盤ももろく、プールも崩壊しかけており、かなり難しい作業になるそうです。そして、2021年ににようやくプールから燃料の取り出しが終わる計画となっています。

海外からも、もし事故が起きた場合は、日本だけの問題ではなく、北半球が汚染されることになるので厳しく批判されています。

このように、政府や省庁の判断が、かなり現状と乖離し一人一人がないがしろにされている実態にも、国難が現れていると思います。

次に、核燃料サイクルについて見てみます。

原発を動かすとプルトニウムが発生します。

ちなみに、プルトニウムにはウランの数万倍の毒性が有り、半減期も2万5千年もあります。ある学者はプルトニウムについて「10ポンドのプルトニウムは粗悪な核兵器を作るには十分であり、3万分の1オンスのプルトニウムを吸飲すれば癌を誘発する」と言っています。

つまり、毒性が高いのと同時に、プルトニウムから原爆が作られます。

プルトニウムを燃料として使用するのが、高速増殖炉「もんじゅ」ですが、1980年代には稼働予定だったにもかかわらず、何度も事故を起こし、実現の可能性はかなり少なくなってきています。

また、青森県の六ヶ所村に建造されているのが、再処理工場です。日本の原発は、軽水炉であるため、プルトニウムが発生しますが、不純物が多く直ぐに爆弾として使えません。

しかし、再処理工場では純度の高いプルトニウムが作られてしまうため、兵器として使用できるプルトニウムを持つことになってしまいます。その量は、年間8トンで、核兵器千発分です。(ちなみに、既に日本は35トンのプルトニウムを、英仏の再処理工場にストックしています。)

日本は核拡散防止条約(NPT)に入っていますが、日本が再処理工場を稼働することは、核を持ちたい北朝鮮やイランなどの国に、核保有を推奨することになるとして、国際的にも避難されている状況です。

省エネのシステムとしての核燃料サイクルは、なんと核兵器製造のサイクルとなっていました。

また、核のゴミは地層処分といって、地下の施設に埋葬することになっていました。
しかし、図らずも東日本大震災が起きたときに、地下水がわき出てきたことから、地層処理によっては放射性物質の安全を保証できないことを、日本学術会議が政府に報告書を提出しています。

原子力はトイレのないマンションと言われていますが、最終的な処分まで考えずに、技術確立ができないまま、とりあえず動かしていると言った感が否めません。

私もエンジニアリングの現場にいますが、人類は発生した問題の原因を解析できるようにはなりましたが、問題を未然に防ぐ技術は持っていません。

開発の現場では、日々予想できなかった不具合が発生し、リコールが起きています。

仕事柄、リコールされた問題についてのレポートを見ることがありますが、事前には絶対に予想できない問題が起こることも度々あります。

そして、原発の場合は不具合が起きた場合に生じる問題が大きすぎます。予測できなかったでは済まされません。

何十万人、何百万人のいのちや生活に深刻な影響を与える技術は実用化してはいけないと思います。

次に、そもそもなんで放射能に被爆すると危険なのか、確認したいと思います。

放射能について知るには、元々人間が抱いている精緻な人体の仕組みを知る必要があります。

生物は、皆さんもご存じだと思いますが、細胞から構成され、核の中のDNAがそれぞれ固有の遺伝情報を持っています。そして、細胞分裂の際に、このDNAの遺伝情報が複製されます。

DNAは塩基で結合されており、わずか数エレクトロンボルト(eV)という極微細なエネルギーによって結ばれています。

セシウムやヨウ素などの放射性物質の直接の影響としては放射線を出すのですが、セシウム137のエネルギーは約661キロeV もあり、巨大なエネルギーによってDNAの情報をずたずたに壊してしまい、遺伝子に異常が発生してしまいます。

その結果、ガンなどが発生することになってしまいます。

またこの放射線の二次的な影響として、細胞の中の水分子に作用し、活性酸素を発生させます。放射線により通常より大量の活性酸素が放出されると、細胞膜が破壊され、細胞が死にます。また、この活性酸素もDNAの傷害を起こします。

このようなメカニズムがあるため、細胞分裂が活発な子どもや赤ちゃんの方が、放射能の影響が桁違いに大きくなります。

なお、高レベルの放射性廃棄物は、最終的にガラス固化体になるのですが、強力な放射能を発生します。ガラス固化体(表面) 製造直後 14000Sv/h(2秒の値である約7.8Svは、100%の人が死亡する被曝線量に当たる。)、

いかがだったでしょうか?

原発を通して、現代の科学文明の抱える闇の深淵が見えてきました。それと重なるように日本の国難の実態も見えてきます。

私たちは高橋先生から、時代の三毒として、唯物主義、刹那主義、利己主義を教えて頂いていますが、原発の問題はある意味で時代の三毒の象徴のようにも見えます。

霞ヶ関や国会で働かれている皆さんは、知力体力に優れた超優秀なエリートの皆さんだと思います。

しかし、どれだけ優秀であっても、時代の三毒にのまれている限り、判断には自己保身や省益優先が入り込みますし、何十年という時間をかけて作られてきた世界の中での日本の国自体の超巨大なシステムに対して、一人の人間ではどうすることもできないというあきらめに飲まれて身動きがとれなくなっている方も多いと思います。

では、どうやってこの巨大な問題を解決できるのでしょうか?

その鍵は、やはり「魂の学」にあると確信しています。

震災によってパンドラの箱が開き、様々な闇の問題が一気に噴出し、もうどうすることもできないのではないかとあきらめかけている方もいらっしゃると思います。

しかし、高橋先生が説かれる「魂の学」はパンドラの箱の底にあった、最後の希望だと思います。

11/4 「魂の発見Ⅱ」という講演会が、横浜、盛岡、広島、沖縄を結んで開催されます。

この問題に「魂の学」の実践によって果敢に挑戦し、結果を出されている方のお話もきっとあると思いますので、ご関心のある方は是非ご参加下さい。

講演会について下記URLに詳細掲載されています。

高橋佳子講演会公式サイト

Soul_Discovery

このブログを読んで、是非参加したいという方がいらっしゃったら、連絡下さい。
twitter:buyan77

4 thoughts on “東北復興プロジェクト 放射能問題群の科学的把握と「魂の発見」”

  1. SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    国難と語られておられるのには、理由があったのですね。福島原発で働かれていた6名の方が亡くなられたそうで、想像を超えた過酷な状況が続いている様子が感じられました。この国難が自分の内面とどう結びついているのでしょうか、・・・考え始めたいと思いました。buyanさんのお話はよくまとめてくださっているので、とても参考になります。

  2. SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    >国難と語られておられるのには、理由があったのですね。

    原発の問題は、深く知るほど、国難が一層リアルに感じられてきますね。

    >この国難が自分の内面とどう結びついているのでしょうか、・・・考え始めたいと思いました。

    自分の内面ももちろんですが、更に深く、日本人全体、人類全体に通じる問題であり、それに対して先生がどのように対峙されようとしているのかまで、少しですが感じられてきています。一緒に深めていきたいですね。

    >buyanさんのお話はよくまとめてくださっているので、とても参考になります。

    ありがとうございます。引き続き、様々な側面から国難への洞察も深めていきたいと思います。

  3. SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    >日本人全体、人類全体に通じる問題であり、それに対して先生がどのように対峙されようとしているのかまで、少しですが感じられてきています。
    とのことですが、ここのところを読んでちょっと混乱してしまいました。できましたら、もう少し詳しく教えていただけるとたらと思います。
     福島原発は、人によっては「危険性は低い」とする人もいます。そういう人でも、「もともと、日本の原発は燃料棒を抱えていてそれがプールに入っているので、どの原発も4号機と同じ危険性を持っている。4号機は建物が一部破壊されているが、他の原発も震度6以上の地震に見舞われたら同じ状態になる。」と述べていましたよ。けっこうのん気なコメントでした。「もう一度大きな地震が福島第一原発を襲ったら、日本は破滅する」と語る人もいます。何がおこっても不思議のない忍土に生きる者の基本的スタンスは、日本は破滅する可能性がある、というところかもしれない、とbuyanさんの記事を読み返してみて、思いました。どうしたもんでしょうかね。

  4. SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    お疲れ様です

    コメントありがとうございます

    色々な情報が錯綜していて、原発推進と原発反対で主張し合うため、真実がつかみにくくなっている状況はあるんだと思います。

    私は、もしまた大きな地震が来たら、これまで以上に深刻な放射能汚染になるんじゃないかという危機感は常に持っています。

    忍土の自覚が必要ですね。

Leave a Reply

Your email address will not be published.

This site uses Akismet to reduce spam. Learn how your comment data is processed.